青色申告の節税効果(国民健康保険料まで含めて比較)
青色申告特別控除は、所得税と住民税を減らすだけではありません。国民健康保険料も下げます。多くの解説が所得税・住民税しか比べていないため、 青色申告の効果は実際より小さく紹介されがちです。 このツールは国保と個人事業税まで含めた「負担合計」で4パターンを比較します。
青色申告(65万円控除)にすると、白色申告より年間245,470円 負担が減ります
| 申告方法 | 事業所得 | 所得税 | 住民税 | 国民健康保険 | 個人事業税 | 負担合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 青色申告(65万円控除・e-Tax等) | 535万円 | 355,200円 | 414,200円 | 587,536円 | 155,000円 | 1,511,936円 |
| 青色申告(55万円控除・紙で申告) | 545万円 | 373,300円 | 423,100円 | 598,116円 | 155,000円 | 1,549,516円 |
| 青色申告(10万円控除・簡易簿記) | 590万円 | 455,600円 | 463,400円 | 645,726円 | 155,000円 | 1,719,726円 |
| 白色申告(控除なし) | 600万円 | 473,800円 | 472,300円 | 656,306円 | 155,000円 | 1,757,406円 |
国民健康保険料の差に注目してください。青色申告特別控除は「所得控除」ではなく事業所得そのものを減らすので、国保の保険料も下がります。 所得税と住民税だけを比べている解説では、この効果が抜け落ちています。 一方、個人事業税は青色申告特別控除を引く前の所得で計算されるため、 どの申告方法でも同額です。
65万円控除を受けるには、複式簿記による記帳に加えてe-Taxによる電子申告または電子帳簿保存が必要です。 紙で提出すると55万円になり、差額10万円分の節税 (この条件では約 37,580円)を取り逃します。
なぜ青色申告特別控除は国保に効くのか
国民健康保険料は、次の式で計算されます。
賦課基準額 = 前年の総所得金額等 − 43万円(住民税の基礎控除相当)
ここでいう「総所得金額等」は青色申告特別控除を引いた後の事業所得です。 つまり65万円控除を受ければ、そのまま賦課基準額が65万円下がります。 東京都特別区の令和8年度料率(医療分7.51% + 支援分2.8% + 子ども・子育て0.27%、 40〜64歳はさらに介護分2.43%)で計算すると、 65万円の控除で保険料は年6万円〜8万円ほど下がる計算になります。
一方、iDeCoや小規模企業共済の掛金、生命保険料控除、扶養控除といった所得控除は総所得金額等を減らさないため、国保には一切効きません。 「控除」という同じ言葉でも、事業所得を直接減らすものと、 課税所得を計算する段階で引くものでは効果の範囲がまったく違います。
個人事業税には効きません
逆に、個人事業税は青色申告特別控除を引く前の所得で計算されます。 事業主控除290万円を引いた残りに、業種ごとの税率(3〜5%)を掛けます。 このため、どの申告方法を選んでも個人事業税は同額です。 上の比較表でも、個人事業税の列だけは4パターンとも同じ金額になっています。
なお、文筆業・プログラマー・システムエンジニアなど、 法定業種(70業種)に該当しない事業は個人事業税がかかりません。 ただし「Webデザイナー」はデザイン業として第1種に該当するなど、 実務では区分が微妙なケースが多く、最終的には都道府県税事務所の判断になります。
65万円と55万円の差は「e-Tax」だけです
青色申告特別控除の額は3段階あります。
- 65万円:複式簿記 + 貸借対照表と損益計算書を添付 + 期限内申告 + e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存
- 55万円:上記のうち、e-Tax・電子帳簿保存の要件を満たさない(紙で提出)
- 10万円:簡易簿記でも可。上記の要件を満たさない場合
65万円と55万円の差は、紙で出すか電子で出すかだけです。 この10万円の差は、税・国保あわせて年2万〜4万円の負担差になります。 会計ソフトからe-Taxで送信するだけなので、必ず電子申告にしてください。
青色申告のもう一つの利点:赤字の繰越
青色申告では、事業の赤字(純損失)を翌年以降3年間繰り越して、 将来の黒字と相殺できます。開業初年度に設備投資で赤字になった場合、 2年目以降の税負担を減らせます。白色申告にはこの制度がありません (変動所得・被災事業用資産の損失など一部の例外を除く)。
また、生計を一にする家族に支払う給与を全額経費にできる 「青色事業専従者給与」も青色申告だけの制度です (事前に届出が必要で、白色申告の事業専従者控除は配偶者86万円・その他50万円が上限)。
青色申告をするための手続き
青色申告をするには、その年の3月15日までに 「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります (1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内)。 期限を過ぎると、その年は白色申告になります。
なお、副業として事業を行う場合、青色申告特別控除を使うには その所得が事業所得と認められる必要があります。 令和4年10月の通達改正により、帳簿書類の保存がなく収入金額が300万円以下の場合は 原則として雑所得に区分されるため、記帳と帳簿の保存が前提条件になります。
計算の前提
- 国民健康保険料は東京都特別区の令和8年度料率。自治体によって金額が変わります
- 国保・個人事業税は本来「前年の所得に対して翌年度に課税」されますが、簡便のため当年の所得で計算しています
- 国保の均等割の軽減(7割・5割・2割)は、東京都特別区の令和8年度の基準で適用しています。単身世帯(加入者1人)を前提にしているので、世帯に他の加入者がいる場合は基準額が上がり、実際はもっと軽減されることがあります
- 基礎控除は令和8年分(合計所得489万円以下で104万円)で計算しています
出典・根拠
- 国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.2070「青色申告制度」
- 国税庁「所得税基本通達の一部改正」(事業所得と雑所得の区分)
- 世田谷区「国民健康保険料率(令和8年度)」
- 東京都主税局「個人事業税」
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
最終更新:2026年8月23日